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タイ人男性の出家について

タイならでは

タイ人男性の出家について

バンコク本社の田中です。先日、会社のタイ人スタッフのご親族(21歳)が出家されました。ご本人の許可をいただきましたので、少しご紹介したいと思います。

仏教国のタイでは、来世のために「徳を積む」ということが重要視されており、そのことを「タンブン」と言います。タンブンは非常に広い意味で使われ、人助けやボランティアをすることもタンブンですし、お寺でお布施をしてお祈りしたり、お坊さんに食事や生活用品を提供したりすることもタンブンです。


その中でも「出家」は最も徳を積む行為とされており、タイの男性が「出家」をすることは、タイ社会全体で広く受け入れられています。社会人になってから出家する人も多く、企業でも「出家休暇」が設けられているほどです。

特に女性は通常出家をしないため、息子が出家をすることは母親の来世のために行う最大の親孝行と考えられています。


出家が決まると、家族は周囲の関係者に招待カードを送ります。出家する人の名前や住所、出家式のスケジュール等が書いてあります。


こうして出家のお知らせを受けると、お金を包んでお渡しします。これもタンブンになります。私の分までどうぞお願いしますという気持ちを込めます。気持ちなので、額は決まっていません。私もいくらが相場なのかタイ人の同僚に尋ねましたが、「気持ちなのでいくらでもよい」とのことでした。

日本で「出家」というと俗世に戻らないイメージがありますが、タイは基本は3か月、短い場合は1週間~15日でもよいのだそうです。

本来の時期は陰暦8月の十六夜にあたる「カオパンサー(入安居・いりあんご)」から、「オークパンサー(出安居・であんご)」までの3か月間ですが、基本的にいつでも受入れ可能というのもタイらしいですね。

出家式には多くの人が集まるそうです。当日の様子を何枚かご提供いただきました。

髪と眉を剃り、白装束を着て集まった人に出家を報告している様子です。心なしか表情が少し緊張しているように見えますね。


白装束から着替えて、本堂に入ってお経を読んでもらい、晴れて僧侶の一員となります。僧侶になるとその時点から女性に触れること、女性が触れることは禁じられます。


参加者には「プロイターン」というきれいに包装された小銭が撒かれます。これはこれまで持っていたお金を捨て去り仏門に入るという意味合いがあるようです。


手前が「プロイターン」で、奥に見えるのは出家の間に使う生活用品です。


後日、私も「プロイターン」をいただきました。これはとてもありがたいもののため、通常は使わずにお守りとして、またはタンブンとして再度寄付をしたりするそうです。


このように、現代でも盛んにおこなわれている出家ですが、最近は価値観の多様化が進み、以前のように「ごく当たり前に」出家をする男性は減っており、気が進まないけど母親のために、もしくは結婚前にお相手のご両親に認めてもらうために、というパターンもよくあるようです。

また、女性で出家を望む人もいるのですが、国がそれを認めていないため、出家を望む女性はインドやスリランカで受戒をするしかありません。受戒をしても、タイ国内では正式な僧侶として認められていない現実もあります。

今回、出家について周囲のタイ人に尋ねたり、調べてみたりしたことで、伝統と現代的な価値観がせめぎ合っている一面もうかがえました。

ひとつの国を知るということはその文化を知るということですが、文化は歴史や宗教や気候や、色々なものと絡み合っていて、本当に奥深いものですね。これからも私のつたない視点を通してではありますが、タイについて知り得たことを、皆さんと共有できればと思います。